今持っているもので十分と思える気持ち『ある ある ある』




 こんにちは。心理カウンセラーの相賀ゆかです。

 日本のへレン・ケラーと言われ、ヘレン・ケラー自身も「私より不幸な、そして偉大な人」と賞賛した中村久子さん。彼女の人生は決して平坦なものではありませんでした。


 2歳の時に、突発性脱疽がもとで両手両足を失い、一時は失明まで経験します。父を失い、弟と生き別れ、痛みと苦しみに襲われる毎日を過ごした久子さん。そんな彼女に対して、厳しくも愛情を注いだ母と祖母は、彼女が将来、独立して生きるために、文字や編み物、縫い物を特訓しました。母親が再婚して、久子さんに冷たかった義父は、久子さんを見世物小屋へ身売りし、更なる苦難が続きます。「だるま娘」とよばれ、両手両足のない身体で縫い物をする芸を見せる久子さんは、そのつらい境遇を言葉に綴りました。その文章が雑誌に掲載され、彼女のことが世間に知れ渡るきっかけとなりました。


 大切な身体の一部、家族、自由を失った彼女でしたが、ないものを嘆く姿はありませんでした。彼女の書いた「ある ある ある」という詩が彼女の気持ちのあり方をよく表現しています ―― 短いけれど 指のない まるい つよい手が 何でもしてくれる 断端に骨のない やわらかい腕もある 何でもしてくれる 短い手もある  ある  ある  ある(中村久子『こころの手足』)


 そんな久子さんの生き方は、私達がいかに多くを持っているかを気付かせてくれ、あるものに感謝する心を大切にすることを思い出させてくれます。最後に、彼女の言葉をご紹介しましょう。

「人の命とはつくづく不思議なもの。確かなことは自分で生きているのではない。生かされているのだと言うことです。どんなところにも必ず生かされていく道がある。すなわち人生に絶望なし。いかなる人生にも決して絶望はないのだ。」

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