ギタリストの2本の指



 
 音楽史上に名を残す偉大なジャズギタリストのジャンゴ・ラインハルト。彼は2本の指だけで指版を押さえるという独自の演奏法ですばらしい音楽を奏でます。

 小さい頃から旅芸人の子どもとして音楽で生計をたてていた彼は、18歳のとき、住んでいたキャラバンが火事になり、左手と左半身に大やけどを負ってしまいました。18ヶ月もの間入院生活を送りましたが、彼の左手の小指と薬指は動くことはなく、医者にもギターを弾くのは無理だろうといわれてしまいました。音楽がすべてだった彼にとって、これほどショックなことはありません。しかし、彼はそこであきらめませんでした。使える指が2本しか動かないというギタリストにとって致命的な状況で、普通のギターコードを演奏することはできなくなってしまいましたが、そんな制約を逆手に取り、メロディーを奏でるように弾くという独自の方法を開発しました。それは、楽譜が読めず、コードの名前すら知らない彼ならではの自由な発想でした。もう演奏は無理だと決め付けたりせずに、想像を超える努力と情熱でその逆境を克服し、超絶のスタイルを生み出したのです。そして、多くのミュージシャンたちからも尊敬され、今もなお多大な影響を与えるような伝説のジャズギタリストとなったのです。

 失ったものに嘆き悲しみ続けて、やりたいことをあきらめてしまうのではなく、残されたもの、まだ動くことの出来る指を最大限に活かし、工夫を重ね、情熱を持って取り組むジャンゴの生き方は、私たちにも励ましを与えてくれます。今、自分の手にあるものに感謝と喜びを感じ、出来ることを探り、無限の可能性を見いだしていく、そういう生き方がしたいものです。


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