自分史を振り返ろう




 加藤久仁生監督の「つみきのいえ」という素晴らしい短編アニメ映画があります。


 一人の老人が、海面が上昇していく町で、つみきのいえを少しずつ積み上げながら長年住んでいました。あるきっかけから海の中へ潜っていくうちに、昔の部屋や品々に触れ、家族との色々な思い出がよみがえってくるというストーリーです。


 監督はこの映画を通して、人々が人生の中で大切にしているものや過ぎ去ってしまったものに対して、どのような姿勢をとるのかを考えるきっかけになる作品にしたかったそうです。

 
 押入れを整理したり実家に帰ったりした時などに、ふと見つけた昔の写真や作文などを手にして、「こんなことを考えていたんだな」「あんなことがあったな」「こんな友達がいたな」と自分の人生の一部を振り返ることがあります。それをきっかけに熱中していたことを再び始めてみたり、疎遠になっていた友人に連絡をしてみたり、昔の自分から励まされたりすることもあるでしょう。


 あなたにとって、今までの人生で大切にしているものは何ですか。あなたの人生の物語はどんなものでしょうか。忙しい毎日の中で、人生を振り返るという偶然の機会は簡単にやってくるものではありません。少しゆっくりと自分探しの時間を作りませんか。


 カウンセリングでは、その時間の多くを自分の人生に向き合う作業に費やしますが、そのツールの一つとして自分史の年表を作ってもらうことがあります。これは一人でも出来る作業です。


生まれてから現在までの自分の印象に残る出来事を年齢や西暦順に書いていきます。その横にそれぞれの事柄において、自分の成長、家族との関係、キャリア・学校、大切な人との出会いなどをカテゴリー別に表にして、心の状態を数字にした幸せ度(百点満点)をグラフにするのもいいかもしれません。自分にとって好ましくない出来事より、好ましい出来事に重点をおくことによって、今まで頭の中でイメージしていたものとは違う、新たな自分史が出来上がることもあります。


 これまでの人生を振り返ることによって、忘れていた自分自身や大切にしていたものの再発見をしたり、今まで気づいていなかった行動や人間関係のパターンを見つけることもあります。今までの人生がいかに今の自分につながっているかをじっくり味わってみましょう。

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